退職する理由は人それぞれあります。前向きな理由としては「他にやりたいことがある」「ここですべきことはやりつくした」等、夢や目標に向かうために退職する。さらなる成長の場を探すために退職する場合は、上司からの慰留はあるものの快く送りだしてくれるのではないでしょうか?また高齢化社会になりつつある現在「両親の介護のため」に仕方なく退職する場合(現在の勤務地や労働時間では満足な介護ができない時)もあると思います。これらのように前向きな理由やどうしても避けられない理由がある退職の場合は、何の問題もないと思います。
ですが……。「給料が安い」「休みがない」「上司に不満がある」といったマイナスの理由から、ただただ逃げたい場合、俗に言う「逃げ」の要素がある場合はどうしたらよいでしょうか?よくある回答としては、今いる場所でやれるだけのことやれとか、上司ともっとコミュニケーションをとれとか、もっともらしく反論できにくいものばかりです。要するに「逃げ」の退職・転職は次につながらないということです。
確かに「逃げ」グセがついて、次から次へと転職を繰り返してしまうのはよくありません。ですが、明らかに条件の悪い労働環境や人間関係を改善することが無理な場合もあります。無理と判断するか出来ると判断するかは本人しだいなのですが、断言できなくてもたぶん無理だと思える場合は「逃げ」と言われようが、とにかく退職してしまうほうがいいかもしれません。人生の時間は限られています。その限られた時間を有効に活かしたいと誰もが思っています。世の中には数多くの会社があり、失業中も安心して職を探せる数多くの制度があります。仮に今現在やりたいことがなくても、数多くの会社の中からやりたいことが見つかるかもしれませんし、見つからずに条件からとりあえず再就職してみて働いているうちにその仕事の楽しみを見つけ出すかもしれません。将来的に状況の改善が見込めないことで「とにかく退職したい!」という場合は回りが「逃げの退職・転職」というかもしれませんが、自分にとってはより良い条件をこれから探す「攻めの退職・転職」なのです(まず自分がそう思い込まないといけません)。「これから」というのだけが問題なのかもしれませんが……。
逆にいうと回りの人(主に上司・同僚)にとっては、まだ行き先が決まってなく「これから」探すというのは,、引きとめる余地が十分あると思えてしまいます。こう思わせるとなかなか退職させてもらえません。実際の理由(会社の将来性に疑問があるとか、同僚が嫌いだとか)はどうであれ、仮の「前向きな理由」をタイミングをみて直属の上司に伝えるべきです。職場を良くしていこうという気持ちがあるなら腹を割って本当の理由(特に不満の場合)を話し解決にむけて努力するのもよいでしょう。ですが、いったん退職の意思を伝えた瞬間あなたは半分以上もう部外者といっていい存在です。本当の理由を話してしまうと、退職日まで(針のむしろのように)働きづらくなるだけですので、ここは何を聞かれても(「不満があるなら直すぞ?」等)仮の「前向きな理由」のみを伝えましょう。仮に不満を伝えてその部分を解消すると言われると、退職する理由がなくなります。最初から不満の改善が目的ならそれでもいいのですが、あなたに退職の意思を告げられてようやく改善に動くようでは今後もあまり期待できないと思いませんか?またその不満部分が解消されたとしても、あなたは一度「辞めます」と言った人として認識されます。今後もその会社で今までと同じように働いていけるでしょうか(何となく居心地が悪くなるはずです)?
もし退職を迷っているようなら止めたほうがいいでしょう。ですが退職することを決断したならば直属の上司に伝えてください。上司・同僚に事前相談するのはよしたほうがいいでしょう。基本的に本人の人生に最終的な責任がとれないのだから、無難な答え(「今の会社でもう少し頑張ろう」「俺だって大変なんだ」等)しか返ってきません。会社外の損得をぬきにした友人でも、辞めたほうがいいとは言わないはずです。当たり前のことですが、自分の人生の主人公は自分です。家族には退職することを事前に伝える必要があると思いますが、それは相談ではなく確認みたいなものでしょう(目標が明確な場合や現職がどうしても耐えられない場合など、身内なら事情が分かってもらえますし今後も色々助けてもらうことになると思います)。直属の上司に退職の意思が間接的に伝わると(例えば上司の上司である部長や同僚のウワサ経由等)上司としては部下の管理能力を問われますし、何よりも面白くありません。スジとして一番最初に伝える人(直属の上司)の印象を悪くするのは、すみやかな退職のさまたげとなるだけです。
また伝えるタイミングも重要です。仮に月から金まで営業で土・日が休みの会社の場合、金曜日の就業後に「ちょっと相談があるのですが……」と切り出すのがいいでしょう。まさか月曜の始業直後に退職の意思を伝える人もいないと思いますが、仕事が一区切りした段階で伝えたほうが落ち着いて話を聞いてもらえます。あなたの退職は上司にとって間違いなく一仕事(引継ぎや後任の手配等)なのですから、できるだけ相手の状況を考えて伝えてください。まれに「絶対辞めさせない!」というとんでもない上司がいると思いますが(人によっては脅したり・土下座したりとあらゆるパターンがあるそうです)、そういう会社こそなるべく早く退職したほうがいいでしょう。それが仮だとしても前向きな理由を伝えても止める理由は「(部下が辞めると)上司としての評価が下がる」や「(労働条件が悪いので)すぐに代わりの人が見つからない」など、上司や会社側の都合を押し付けているだけです。民法上は退職の意思を伝えてから2週間で退職できるので、どうしてもという場合は労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。今の世の中では「辞められない」という問題も発生しています。
前向きな理由を伝えた退職だと、ほとんどの会社では就業規則に基づいた(たいていは1ヶ月前までに伝えることになっていると思います)形で退職することになります。その間、大きな会社では普段会わないような人(部長や取締役等)が引きとめにくるかもしれませんが、ここでも退職の意思を貫いてください。何度も書きますが、引きとめられそうだと相手に思われる(期待させる)と単に話が長くなるだけです。「2、3日考えてみろ」と言われた場合は2、3日後に頃合をみて「考えてみましたが、退職の意思は変わりません」と相手の目を見てはっきり伝えてください。
こうして会社内部で合意をとってから、退職願い(届け)を提出することになります。日本社会ってめんどくさいですが、こういう建前重視だからこそ退職理由が前向きであった場合(それがウソとバレバレでも)、退職を止めることができないのかもしれません。