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退職関連の読書メモ

雇用破壊 非正社員という生き方 鹿島敬著 岩波書店

若年フリーター・中高年フリーター・女性非正社員の現状を踏まえて、非正社員という「雇用」のあり方についての問題提起です。90年代半ばまで企業がパート労働者を雇う理由は「簡単な仕事だから」という理由でした。それが2000年には「賃金コストが安くすむから」という経営上の理由がトップとなっています。コストは安ければ安いほどいいとはいうものの、非正社員という働き手が増加している現在、劣悪な雇用条件はそのまま将来の社会問題につながってしまうだろう。

まず非正社員のフリーターの仕事とはどういうものかというと、ほぼ「サービス業に従事する仕事」とイコールとなってしまう。フリーター全体の約7割がサービス業に従事し、その内訳は「接客・給仕」「商品販売」「レジ」「その他サービス職」「飲食物調理」となっている。また半数以上が従業員30人未満の小規模な企業・事務所に勤務している。そして低収入というのが特徴である。著者はフリーターにおける最大の問題は、低収入という賃金の低さだけでなく「努力を評価する回路の遮断状態」というものを挙げている。がんばっていても(それを上司が認めていても)昇進・昇格につながるわけでも正社員になれるわけでもない。報われない夢がもてないという環境なのだ。

中高年フリーターは若年フリーターがそのまま年齢を重ねてたどり着くタイプと、自己都合退職に追い込まれ(従ってすぐには失業手当はでない)とにかく当面の生活費が必要なため非正社員として働くタイプに別れる。いずれも非正社員の道を選ぶと正社員になる(戻る)のは難しい。女性の非正社員問題については、日本での旧来からある男女の役割「男性は仕事、女性は家庭」が現在は「「男は仕事、女性は仕事+家庭」となっていることが家計補助型の非正社員の多い理由だとしている。

著者の分析によれば「不本意な”希望退職”配転などがあったとはいえ、中高年の雇用機会は維持」されたのだが、そのしわ寄せは若年世代の非正社員にいったと指摘している。有期雇用の上限延長や派遣社員の受け入れをほとんど分野で認めることで「安価な、使い勝手のいい労働力が量産」されているのだ。では正社員は安泰かといえばそうではない。「正社員は多忙すぎ、非正社員は安すぎ」「どちらの道を選択しようと、夢や意欲はわいてこない。働くことに関して、前向きになれない。ことに非正社員の場合は正社員の代替要員としての役目も強まっているため、『安すぎる』だけでなく『忙しい』という要素も加わって、魅力喪失に拍車がかかっている」とどちらを選んだとしても苦しいのだ。

その他本書では「請負」や「不払い残業」という問題にもふれられているし、これからは非正社員の側へ正社員の待遇を合わせようとする(要するに労働条件の切り下げなのだが)動きがでていると注意している。日本の労働条件の実態はとにかく厳しい。