転職したいヤツに欲しい人材はいない 梅森浩一著 光文社
あらためて見ると、すごいタイトルですね。この本では、転職とひとくくりにされてしまいがちな行動を「転社」と「転職」は別物であると分けて考えます。いままでの経験やスキルを活かした会社を変更する転職を「転社」、全く新しい職業経験(起業も含む)に挑もうとすることを文字通り職を変えることを「転職」というわけです。本書ではサラリーマンが転社・転職したい最大の理由は何となく「気分を変えたい」というのが多く、その場合は無理に転社・転職するのではなく、まず自社内での移動や転職願望を叶えるべきだとしています。そして迷っている間は転職してはダメと釘をさします。それは「少しでも迷いがあるなら、それは天秤にかけたモノがいまだハッキリと重さを量り切れていない」からだというわけです。サラリーマンそのものを続けるのか?卒業するのか?また会社に留まるのか?移るのか?をそれぞれプラス・マイナスを考えたうえで決断すべきですとしています。
また著者は、転社・転職における仕事の移り方に「水平移動」と「垂直移動」があり、30歳前後までは平社員→平社員の水平移動、35歳以上は管理職→管理職の水平移動のマーケットはあるが、基本的に平社員→管理職といった垂直移動といった需要(経験者を求める中途採用において)はないとしています。そう考えると一般社員としての転社・転職は、どんなに遅くても35歳ぐらいまで、それ以上の年齢ならば今の会社で管理職を目指すのが適切なのかもしれません(もちろん出世や収入を無視した生き方もあると思いますが)。ちなみに第2新卒は別として30歳以上の転職は「待った」がきかない(=即、結果を求められる)ことも忘れてはいけません。そうしてみると、仕事のやり方から人間関係を一からやり直す転社・転職をするには相当の覚悟が必要でしょう。
求人情報には「待ちの情報」と「攻めの情報」がある、という見方も興味深いです。「待ちの情報」とは新聞・専門誌の求人広告や人材紹介会社に登録すると教えてもらえることなど、一般的な転社・転職活動の情報のことです。それに対して「攻めの情報」とは、自分から求人情報をとりにいくことです。それもただ単に興味ある企業に「募集(欠員)ありませんか?」と聞くのではなく、「さらに一歩踏み出して、『自分用にポジションをつくってもらう方法』」を提案しています。希望企業を分析した上で事業プランをプレゼンするにはかなりの実力が必要だと思いますが、普通の転社・転職活動でも「何をやりたいのか?どう貢献できるのか?」ぐらいのことは必ず訊かれます。、新しくポジションを作ってもらえるかどうかはともかくとして、転社・転職活動においては「攻め」の姿勢(こちらから情報をもっていく)で行動すれば一目おかれる(採用されるかどうかはまた別問題かもしれませんが)のではないでしょうか。
転社・転職するしないにかかわらず「できる人の目に留まり続けることがとても重要」と最後にアドバイスがあります。これは社内で出世するときのみならず、ヘッドハンターが人材を探すときは「基本的には『できる人からの紹介』」であるからこその助言です。結局のところ、今いるポジションで全力をつくすことが一番大事ということでしょうか。